「宇宙は空飛ぶスパゲッティによって創造された。」
……という教えを信仰する宗教がスパモン教である。
正確には
「宇宙は5000年前にヌードルの職種を持つ怪物フライングスパゲティモンスター(FNS)が大酒を飲んだ翌日に創造した。その後宇宙が数十億年前に生まれたように見せかける細工をした。」
と主張している。
スパモン教教義
以下教義を幾つか抜粋しています。
- 進化はスパモンのヌードル職種によって推進された。
- 古代の人の身長が低いのはスパゲッティ・モンスターの触手によって頭を押さえつけられていたからであり、現代人の背が高いのは人口増加によりスパゲッティ・モンスターの触手の数が足りなくなったからである。
- ボビー・ヘンダーソンがこの宗教の「予言者」である。
- 彼らが信仰する偉大なるスパゲッティ・モンスターと同様、スパモン教徒は家族倫理を共有している。
- 祭日は毎週金曜日
- 天国ではストリッパー工場とビール火山が約束されている。
- 祈るとき、「ラーメン」と言う。
- ヌードルはスパゲッティ・モンスターの触手を象徴する聖なる食物である。
- 学校教育では進化論のみならずスパゲッティ・モンスター創造説も教えるべきだ。
- 創造主であるスパゲッティ・モンスターが実は存在しないという明確な科学的証拠さえ提示されるのであれば、スパゲッティ・モンスターが実際には存在せずスパゲッティ・モンスター教の教えが誤っているという事さえ否定しない。
- 教祖や教団にお布施をする代わりに、そのお金は「貧困をなくす」、「病気を治す」、「平和に生きて、燃えるように愛して、電話の通話料を下げる」ことに使う。
- 信者は「善なるもの全てを支持し、善ならざるもの全てに反対」する。
赤字部分は重要になるからなんとなく覚えておいてね。
空飛ぶスパゲッティモンスター教はパロディ宗教
スパモン教はアメリカのカンザス州にて「進化論とインテリジェントデザイン説の公教育における取り扱いについて」という議論によって生まれた宗教だ。
もう少し簡単に言うと「ID説」という考え方と公の学問との境で生じたトラブルによって生まれたと考えてくれて良い。
……それでもまだ難しい?
では少々噛み砕きながらことの経緯を説明していこう。
ID説とは?
ID説とは簡単に言えば
「進化論で説明できないことが現実にあるから、それってつまり人智を超える創造主的存在が作ったってことの証明だよね?」
という説である。
つまるところ宗教における「神」という存在の証明の根幹とも言うべき考え方の一つだ。
この「ID説」と舞台の「アメリカ」……つまり今回の議論におけるID説側の主張者は「キリスト教」だとわかるね。
「宗教」と「公教育」……おっと既にキナ臭くなってきたじゃない。
科学と宗教
もともと科学はキリスト教徒密接な関係にあり、
「聖書に書かれていることは絶対的な心理だ」と科学側も主張していた時代がある。
聖書には「全ての生物は神によって完成された姿で想像された。故に生物の姿かたちは永遠に不変である。」
と記されている。
しかし、1800年頃に人類は史上初めて「恐竜の化石」を発見する。
「恐竜の化石は明らかにこれまでの生物とは異なる姿かたちをしている。」ということで、生物は進化しているんだ!
……となり、「進化論」が提唱された。
ダーウィンやメンゲルといった有名人たちの証明によって、進化論は理論的な科学として実証されたわけだ。
ID説と公教育の衝突
1900年頃のアメリカは「合衆国」であったがためにあらゆる民族が暮らしていた。
特にテネシー州では、それら複数の考え方が混在する中で公教育の定義を定めるのは非常にデリケートな問題だった。
〇選ばれた進化論
公教育には進化論が選ばれた。
しかし、
「進化論はあくまで仮設であるため、ID説を否定することはできない。そのため、生徒にはどちらが正しいかを自由に決める権利があるはずだ!」
という主張をキリスト教がしたことで、公教育の現場に問題が生じた。
キリスト教はその権力を持って「進化論を禁止する法律」を次々と作っていった。
そしてそれから約40年。
だれも文句を言うことはできず、その状態は続いたのだった。
進化論を教えた教師が逮捕されたなんて事件も起きたよ。因みに有罪。
1900年代って、じっちゃんやばっちゃんが生きてる時代だよね?世界最新科学のアメリカがそれって……。
転機はソ連の人工衛星打ち上げ
1968年にソ連が人類初の人工衛星の打ち上げに成功した。
これに焦ったアメリカは、国中の公教育の見直しに踏み出した。
その後、テネシー州では即座に進化論禁止法は撤廃された。
〇創造科学
創造科学とは、現代科学と宗教をなんかよくわからない理由で融合させた学問だ。
完全にキリスト教の権威を守るためだけに作られた学問であったがために、学ぶ価値は興味本位以外にない。
キリスト教は創造科学を現代科学と同じ時間数で教える法律の制定を要求した。
しかし、裁判官は
「公教育の科学とは自然法則によって導き出される。自然法則への言及によって説明される。経験可能な世界に対して検証可能である。その結論は狩りの物であり反証可能なものである。」
としてキリスト教の要求を棄却した。
インテリジェントデザイン説VS現代科学
要求を棄却されたキリスト教は「神」を「高度な知性」という言葉に言い換えた「インテリジェントデザイン説」を引っ提げて再び要求を突き付けてきた。
〇インテリジェントデザイン説
「進化論は認めるけれど、DNAの螺旋構造などは偶然に出来上がったとは考えられないため、そういった部分は神が作ったってことだよね。」という少しだけ物腰の柔らかくなった理論だ。
キリスト教は教育委員会に信者を送り、支持率を高めて運動を起こした。
これに時の大統領である「ブッシュ」までもが指示を表明。
アメリカの公教育は危機的状況に陥ってしまう。
大統領が進化論を否定したのかよ!やべぇなおい。
政治家は声の大きい方を支持した方が勝つんだよ。人気取りだからね。今と同じさ……。
メシア「スパゲッティ・モンスター教」爆誕!
これを受けて立ち上がった「ホビー・ヘンダーソン」が提唱した宗教が「スパモン教」である。
彼の主張は、
「近代科学の観察結果に基づいて提唱された進化論と、
説明不能な点の多すぎるインテリジェントデザイン説が同等に扱われるならば、
同じくスパモン教も等しく扱われるべきだ!」
というものだ。
つまり「「神」という曖昧なものが認められるならば、スパモン教が認められないのはおかしい。」ということだ。
そしてスパモン教が認められなければ裁判を起こすと表明した。
これによってスパモン教は世界に拡散。
スパモン教が圧倒的な支持を得たことで、インテリジェントデザイン説は公教育の場から姿を消した。
もちろんスパモン教も採用されませんでした。
めちゃくちゃ真面目な理由で創設された宗教だったんだね……。
スパモン教は終わらない
役目を終えたかに見えたスパモン教だが、その人気は衰えることなく更に世界へと普及する。
なんと熱狂的な信者たちの呼びかけによって
ニュージーランドとオランダにおける正式な宗教の一つとして承認されたのだ。
さらに
- スパモン様に愛を誓う「パスタ婚」
- パスタ用の湯切り皿を被った免許証写真の許可。(イスラムの頭巾が認められているため)
といったことが施行された。
スパモン教は宗教の闇に斬り込むためのアンチ宗教
- スパモン教はキリスト教の横暴を抑えるために創設された。
- スパモン教の教義がめちゃくちゃなのは宗教への皮肉。
- スパモン教は理論的に否定された場合、その理論を尊重する。
- 今なお人気があるのはそのユニークさと、宗教の闇を嫌う人々の意志が理由。
日本に住む限りは宗教による圧力を感じることは少ないかもしれない。
しかしキリスト教やイスラム教を支持する地域では、それに息苦しさを覚えている人も多数存在する。
そういった宗教に対してのアンチテーゼとして台頭したスパモン教は、
今なお愛されているのである。
暴走するとしてもネタ方向にしか進まないから、宗教と言っても安心して見てられるのがいいね。
因みにスパモン教は30日間の体験入信ができます。
うおぉぉぉ!はいるしかねぇぇぇぇ!
※以下はスパモン教日本支部の公式HPです。
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