久しぶりに歴史人物解説やってよ!
君の方からそんなことを言い出すなんて珍しいね。
そうだなぁ……ならそろそろ有名どころでハンニバル・バルカあたりを……。
悪役がいい!あと何かの物語の題材になっている人とかがいい!あたいが知らない人で!
悪役で物語の題材で知らない人!?物語の題材になっている時点で知名度は高いじゃん!しかし……あるんだなこれが。しかも君の好きそうなカッコいい要素、吸血鬼の題材になった人物さ。
吸血鬼?ドラキュラ以外にそんな人がいるのかい?
今回紹介するのは「エリザベート・バートリー」。あの「吸血鬼カーミラ」 おモデルとなった狂人さ。
最悪の吸血鬼
エリザベートは「完全なる悪」である。
基本的に吸血鬼のモデルとなった人物は生前の悪行が目立ったことでそう称されることになるのだが、中でもエリザベートは別格級の悪人だ。
最大の知名度を誇る「ドラキュラ伯爵」のモデルである「ブラド・ドラクリア」は自国を守るためにあえて悪い噂を流すよう仕向けていた。
子供を拉致して性的趣向を満たしていた「ジル・ドレ」の行為は許されないが、元々はフランスの英雄であり、愛するジャンヌダルクが処刑されてしまった失意から狂ってしまったという可哀想な側面もある。
しかし、エリザベートにそういった同情の余地はない。
彼女は完全で、最悪で、醜悪で、利己的で、暴虐で、狂気的で、血を愛し、血に狂った女性であった。
血に狂わされた出生
1560年ハンガリーでエリザベート・バートリーは生まれた。
しかしこの彼女が生まれたこの「バートリー家」は自分たちの血を神聖視していたために、近親婚を繰り返し行っていた一族でもあった。
「近親婚」をすると血が濃くなりすぎて遺伝的疾患を起こすとされているよ。
そのためか、バートリー家の人間は全員がなにかしらの疾患を抱えていたという。
叔父は自身の癇癪で亡くなり、叔母は淫乱症、妹は女の首を絞め殺すという異常性癖を持っていた。他にも悪魔信者となって周りの人間に噛みついたり、突然奇声を上げたりするといった人間が親族内の数多く存在した。
そんな狂った一家に生まれたエリザベートもまた、疾患を抱えていたということは想像に難くない。
出だしがもうヤバい。
退屈と美
エリザベートは許嫁である「ナダスディ家」の男と結婚した。
ナダスディ家は厳格な家柄であったため、娯楽がなく一切ない場所であった。折角結婚した夫も戦争続きで家に帰ってくることもない。残された家では姑がうるさく、相談相手もいない。エリザベートは退屈とストレスでいっぱいになっていた。
ついには我慢できなくなったのか、自室に引きこもってしまったエリザベート。しかしそこにも娯楽になるようなものはもちろんないため、彼女ができることと言えば、「自身の美しさに酔いしれる」ことだけだった。
エリザベートは「ナルシスト」だったらしい。自分が素晴らしく美しい存在だと信じていたから、携帯していた手鏡を使ってずうっと自分を見つめていたそうだよ。
実際綺麗だったんか?
容姿は良かったらしいよ。
血の目覚め
44歳の時、夫と姑が亡くなった。
エリザベートを抑えつける者がいなくなったことで彼女の暴走が始まる。
- 女中たちに暴力を振るう
- 愛人を沢山作って性欲を満たす
- 怪しい人間から魔術を教わる
上記は夫が亡くなる以前から行っていたことであったが、相手をしてやれない負い目からか夫が注意をすることもなかった。
本当は夫の気を引きたかったのかな?
エリザベートが「血の伯爵夫人」と呼ばれるようになったのは夫が亡くなってからの残虐行為によるものだ。
ある日のこと、女中に髪をとかさせていたエリザベートだったが、手を滑らせた女中が部屋の小瓶を割ってしまう。
これに激昂したエリザベートは持っていたヘアピンで女中の顔を刺してしまう。
そしてその時に自身の頬に付着した女中の血を拭ってみると、
なんと「血が付着していたカ所だけ若返っている!」
……とエリザベートは思い込んだ。
ひえっ!
これからが「血の伯爵夫人」としての本領さ。
処女の生き血によって若返る
「処女の生き血を付着させると若返る。」
そう信じたエリザベートは農民から娘を買い取っては屋敷に招き、その血を搾り取っていった。
浴びれば浴びるほどに若返ると信じているエリザベートは「血の風呂」といった漫画でしか見たことのない物を実際に使用していたという。
〇血の風呂
浴槽の上に棘のついた籠を吊るし、そこに娘を敷き詰める。娘が痛みにモガクたびに血が浴槽に落ちて溜まっていく。
さらにエリザベートは娘を暴行することにも快楽を覚えたことで残虐非道な拷問の数々を実行していく。
- 熱した鋼を性器に入れる
- 口の端を裂いてバッドマンのジョーカーのようにする
- 喉を焼き、目を潰し、八つ裂きにする
といったことを日常的に行うようになっていた。
あばばばばばばばっ!!
快楽殺人鬼という言葉がこれほど似合う人間もいないだろうね。最早「人間」ではない気もするけれど。
アイアンメイデン(鉄の処女)
誰しも一度は耳にしたことがあると思われる拷問器具「アイアンメイデン」。よくゲームや漫画にも登場しているため、子供でも知っている子は多いことだろう。※因みに私の場合は「シャーマンキング」が最初だった。
これを発明した人物こそ「エリザベート・バートリー」だと言われている。
ただし現存しているアイアンメイデンがエリザベートの死後以降に作られた物しかないことから、そうではないという説もある。(現状不明)
殺すことを目的にするにはあまりに無駄がおおい器具だが、「血を抜く」という意味では非常に有用だ。そういった点がエリザベートに結び付けられているのかもしれない。
終焉
段々と見境がなくなっていたエリザベートは遂に貴族の娘にまで手を出してしまう。
これによって誘拐の容疑をかけられたエリザベートは家宅捜索をされることになる。
捜査担当である「ツルゾ侯」が地下室への扉を開くと、
そこには見るも無残な状態の少女たちの遺体がそこら中に転がっていた。部屋中は血で赤黒く染まり切っており、まさに地獄といった有様だったそうだ。
即座に裁判にかけられたエリザベートは有罪判決を言い渡される。
〇判決:死刑
生きたまま手足の指を抜いたのちに火刑に処す
……がしかしこの刑を受けたのはエリザベートの虐殺の手伝いをしていた女中たちだけであり、当のエリザベート本人は法廷に1度たりとも出席していない。
「バートリー家」という名門の名を持つエリザベートを処刑にする法律は、この時代にはなかったのだ。
しかしそれでも罰は下る。
判決:監禁
光のない個室で永遠暮らすこと。
自身の美貌を見つめることを至上の喜びとしていたエリザベートにとって、何も見えない生活は耐え難いものだ。
そうでなくとも一生を何も見えない暗黒の中で過ごすなど、常人では不可能と言ってもいい。
結局約3年の月日が経過した頃に発狂し、エリザベートはこの世を去った。
死刑より辛い罰じゃん。
エリザベートの遺体は片手で持てる程に軽く、まるで朽ち果てたかのような姿だったそうだよ。
吸血鬼カーミラ
- 殺害した少女の数は約600名
- 殺害が行われたエリザベートの城「チェイテ城」は心霊スポットとして有名
- ひょっとしたらこの話は「バートリー家」の力を削ぐための作り話の可能性がある(わずかに)
- 吸血鬼カーミラのモデルとされている
現在のエリザベートに対する世間の見方はこんなところだ。
吸血鬼カーミラは作家ジョセフ・シェリダン・レ・ファニュが1872年に書いた小説だ。
当時では珍しい女吸血鬼を題材としており、狙う対象も女のみということからレズビアン的作品としても見られている。また、ドラキュラなどのホラー作品とは違い、サスペンス的に書かれている点も特徴的だ。
女性が女性の血を狙う点と作家自身の発言から、カーミラのモデルはエリザベートであると判明している。
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